外国人の労働に対する意識を見ることで日本型資本主義の成立要因を考えてみる

先日朝のラジオでつぎのようなニュースがありました。

群馬県太田市の職安(ハローワーク)で、外国人就労者に対するガイドを作成。その中では、「会社へは定時に出勤しなければ行けません」など、日本で働く場合のマナーやルールが外国語(スペイン語ポルトガル語)書かれている。

これを聞いて、私がブログに書いた「近代(モダン)とは何か? その2 3.空気としての日本的民主主義」につながる話だとピンと来たので、そのことについてこの職安のルールブックや私の体験などを引用し、日本型資本主義の本質(実態)を浮き上がらせてみたいと思います。

ニュースを聞いたのは車の運転中だったので、一言一句正確に聞いたわけではありませんが、概要を聞く中ですぐにその意味や背景が想像できたので、家に帰ってから早速電話で問い合わせをしました。職安が作成したのは小冊子で10ページほどあり、ネットには公開していなかったので、主要な部分を指定してコピーを取ってもらった上でFAXで送信してもらいました。

太田市の周辺は、日系のブラジル人やペルー人を中心に外国人労働者が多い地区で有名なところです。地元では、ミニFM局で外国語(スペイン語等)の放送をしたり、市民が通訳や道案内などのボランティアをしたり、サンバのイベントが開かれたりと、ほほえましい光景を報道で知る機会があります。今回の小冊子作成のニュースも、決してマイナス面を報道したわけではなかったのでしょうが、調べてみるとその背景は私が予想した以上のものでした。

早速その冊子の記述を抜粋して紹介します。ます、「はじめに」で次のように書いてあります。

日本で生活し、日本で仕事をするにはここに書かれたことを実行し、守ることが基本です。与えられた仕事をできるだけ早くマスターし、職場の仲間と協調し、一生懸命仕事に取り組めば、楽しく充実した生活が送れるでしょう。

これに続いて、1.日本語をマスターしましょう 2.健康管理 3.在留期間の更新 について解説してあります。そして次のページには、「職場のマナーとルール」が書かれています。その中の「1.出勤」から抜粋します。

  • 会社へは定刻までに出勤しなければいけません。始業時間には持ち場につき、仕事が始められるようにしましょう。
  • 正当な理由なしに遅刻しないで下さい。
  • 会社に入ったら「おはようございます」と挨拶をしましょう。
  • 会社には臭いの強い香水は付けていかないようにしましょう。

日本でも、ニートを雇っている会社などでは、彼らは朝起きられないので自宅へモーニングコールをする、というような事例もあるようです。しかし、それは最近の日本の特殊な事情であり、少なくとも貧しいから稼ぎに来ているブラジルやペルー人に対して、「会社へは定刻までに・・・」とわざわざ書かなければならないのはなぜでしょうか。結論の前に、さらにこの冊子の記述を見ていきます。

「2.欠勤する場合」でも、同じように「正当な理由なしに・・・」とか「欠勤をする場合は・・・許可を受けて下さい」とか小学生にいうようなことが繰り返し書かれています。さらに「3.職場では」の項では

  • 仕事中は私語を慎んで下さい。
  • 会社内で賭博、その他これに類似の行為をしてはいけません。
  • 許可なく会社の物品を持ち出したり、私用に使わないで下さい。
  • 会社の承認を得ないで、在籍のままアルバイトや他に就職しないで下さい。

というような驚くべきことが並べられています。この後早退・外出、休日・休暇、退職する場合など「職場のマナーとルール」が細かく書かれています。またその次には生活のルールとして

  • ゴミは道路などに捨てないで決められた袋に入れて・・・
  • 町内会費は決められた金額を納めましょう。
  • 電車やバスは目的地までの正しい切符を買って乗りましょう。

などと書かれているのを見て、私が想像したよりもはるかにすごい内容に驚きました。こういうことが書かれているということは、実際にはこれに反することが行われているということなのでしょう。そのあたりはどの程度の状況なのかと思い職安に電話をして聞いてみたところ
「実際マナーやルールが守られず、雇い主から苦情や相談が多数寄せられており、なんとかせねばと思いこの冊子を作成した」
ということでした。日本に来ているのは、「日系人」が多いわけですが、特別マナーの悪い人だけ来ているということではないでしょう。これらの(日系)外国人と日本人のマナーの差はどういうところから来ているのでしょうか。次回以降さらに分析を進めていきたいと思います。

<つづく>