防衛大臣辞任〜属国丸出しの幕切れ〜

久間防衛大臣が「原爆投下はしょうがない発言」をしたとして、被爆地や被爆者を中心に抗議がわき起こり、野党左派勢力も結集して「罷免を要求する」と気勢を上げているさなか、本人が辞任することになりました。今日のこの事態については目先のことに惑わされずに、少々さかのぼって考えなければなりません。それをセットで考えないと全体像が見えてこないのです。

その要点は

  1. 久間氏がアメリカのイラク政策に対する批判をしたこと
  2. 長崎市長選で選挙中に現職の市長が銃撃されたこと
  3. 今回の原爆投下容認発言

です。

久間氏は、小泉政権の時にもアメリカのイラク侵攻に関して物議を醸した発言をしていますが、今年の初めにも同じ主旨の発言をしています。

フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より
2007年1月25日には、「日本記者クラブ」における会見で「イラク大量破壊兵器があると決め付けて戦争に踏み切ったブッシュ大統領の判断は間違いだった」と述べた。イラク戦争を支持している安倍内閣において、久間の発言は閣内不一致であるとの批判がなされたが、内閣官房長官塩崎恭久は「久間氏の個人的な、閣僚としてではなくいち政治家としての意見であり、閣内不一致ではない」と強調した。政権側は大統領批判ではないと釈明した。1月29日午後衆議院本会議において、民主党松本剛明にこの点を追及された久間は「(開戦)当時、閣外にあって感じた感想として述べたもので、防衛相としては(米国支持の)政府の立場を支持している」と釈明した。

要人の発言として適当がどうかはさておいて、我々真実派(これについての説明は省略)にとって、アメリカのイラク侵攻に何ら大儀がないという観点から、この発言は胸のすく思いがしたわけです。少なくとも感情的には。そして、政府の要人がこれだけのことを言える背景は何だろうか、と思惑を巡らせていました。

しかしその後4月17日に、選挙中の長崎市伊藤一長氏の銃撃事件が起こります。報道では久間氏との関連は全く触れられていませんでしたが、久間氏も長崎県の選出であり、タイミング的にも何かあると感じたのは私だけではないでしょう。これについて、「副島隆彦の学問道場」の掲示板でアルルの男・ヒロシ氏が次のように述べています。

[518] 長崎市長暗殺 投稿者:アルルの男・ヒロシ 投稿日:2007/04/19(Thu) 10:52:49
長崎市長暗殺についての、私の勝手な考えを述べたいと思います。
報道では、金銭目当てとか行政トラブルとかの理由で、山口組系の地元暴力団組員が、長崎市長伊藤一長氏)が殺害されたといわれていますが、こんのは嘘でしょう。古館の番組(この番組大嫌い)に容疑者の城尾哲という組員が、犯行声明を送ったといわれていますが、これも陽動でしょう。
私はこの場所が長崎市であって、地元の国会議員が久間章生氏である事に注目し、犯行に使われた銃が米国製のS&Wであることにも注目したいと思います。
この事件の影響で米軍司令官と会合予定のあった久間防衛大臣は、予定をキャンセルし、クニに帰って弔問に訪れているようです。彼を参院選に擁立する動きもあったらしく、この事件には、反米的な久間氏に対する無言の圧力という性格があるのではないかと勝手に疑っています。
行政トラブルが理由で、市長を射殺するということは、普通あり得ません。(犯人が気違いであれば別)

このような経緯を経て、今回の原爆投下発言があったわけです。*フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より

「原爆投下はしょうがない」発言
発言概要
2007年6月30日、麗澤大学比較文明文化研究センター(千葉県柏市)主催の講演会で、アメリカの長崎への原子爆弾投下について、日本を降伏させ、ソ連の参戦を食い止める為との見解を示した。そして「原爆を落とされて長崎は無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったのだ、という頭の整理で今、しょうがないなと思っているところだ」と述べた。また「米国を恨む気はないが、勝ち戦と分かっている時に原爆を使う必要があったのかどうか、という思いは今でもしているが、国際情勢や戦後の占領を考えると、そういうことも選択肢としては、戦争になった場合はあり得るのかなと」と原爆投下の判断に理解を示すかのような発言した

国会議員などの政治家が講演を行う中で、前後の文脈を無視され、部分を切り取られて批判に晒されるのはよくあることで、動向を注視されるのは大変なことだと思います。この発言の前後がどのようなものであったかは分かりませんが、この発言に対しての動きの中で気になるものが2点。

一つは現長崎市長の速攻。先の銃撃事件で急遽立候補した2人のうち、伊藤氏の身内が敗れ、確か市の職員が当選したと記憶しています。仮に伊藤氏と久間氏のつながりがあったとして、その身内を破って当選した現市長が速攻で地元選出の国会議員、しかも現役の大臣に抗議文を手渡しに上京するというのは、政治的な視点から単なる抗議とは考えられません。政治の内幕を知っている人ならこれはおかしい考えると思いますが、私の詮索はここまでにします。

もう一点気になったこと。冒頭で述べた野党左派勢力が結集しての抗議です。野党といいましたが、これに関しては公明党としても抗議の発言がテレビで流れていました。

これらの抗議を見て多くの国民がどのような感想を抱いたか分かりませんが、私からしたら火事場泥棒にしか見えません。参院選を前に格好の材料が出たのをいいことに「我こそは正義で善人なり」と宣伝しているのです。誰の何を攻めているのか、躍起になって。

まるで原爆を落としたのが久間元大臣とでも言いたげなこの勢いは何なのか。「原爆投下は戦争終結のために仕方がなかった」というのは元々アメリカのプロパガンダじゃないか。それに対して国際法廷に持ち込むとか、国会の決議を行うとか、核廃絶・永久平和を願うならそういう行動に出るべきで、日本人の中に犯人を捜すのは筋違いだと思います。奇しくもアメリカで、ありもしない、アメリカ人にはほとんど関係ない「従軍慰安婦に対する謝罪決議」なるものが可決され、国際社会で日本の名誉が傷付けられている中で、日本人同士で原爆投下発言の責任問題を議論していることのなんと不毛な事よ。

国益を考えるとアメリカの罪を責められない属国であるならば、そのことを国民に知らせて正直に言うべきだ。そしてどうすればこの先日本の国益を確保することができるのか、真剣に考えるのが国会議員の役目でしょう。