「わしズム」でボツになった原稿 その3

しかし、論理で否定したところで実際多くの食べ物に使われているのは事実です。しかも、多くの方が、入っているか否かの区別がつかないまま食べているのが現状ではないかと思います。私もかつてはわかりませんでした。
区別がつかない人が化学調味料の是非を論じても困ります。化学調味料を使わないで十分な良いだしを使った料理よりも、悪いだしに化学調味料を使った料理のほうが好きなんだ、という方はどうぞ存分に召し上がって頂きたいと思います。そうでない方は、やはり比較した上で意思表示をするべきではないでしょうか。
私の経験からすると、化学調味料が入っている食べ物と、そうでないものを比較して味わっていくと、やがて舌でわかるようになります。過剰に使われている場合は、口に入れた瞬間に異常なうまみを感じますし、バランスよく?使われている場合でも、食べている途中や食べ終わったときに、舌や口の中に何かまとわりついているような不快感が残ります。不快と感じたものは、次から食べようとは思いません。つまり私の場合は、化学調味料は不快に感じるため、口に入れないようにしている、ということです。
ある小学校の家庭科の授業で、みそ汁を作るので家から「ほんだし」を持ってくるようにと先生が言いました。しかし、「ほんだし」を使ってないある家の子供が、しょうがなく煮干しを持って行ったところ、ほとんどの子供が煮干しのみそ汁のほうがうまいと言ったそうです。正常な味覚で比較すれば自ずと結果は出てくる、という気がします。

さて、化学調味料を使っていなくても、色々な食材が混ざって味付けされているため、舌では判断できない場合もあります。そんな場合は「食後感」で食物を識別することができます。
生命力のある「よりうまいもの」は、体が早く吸収しようとします。そういう食べ物は、腹一杯食べても胃もたれや胸焼けというものがありません。食べた後、お茶でも飲んでいる間に胃がすっきりしてきます。逆にいつまでも胃袋に残っていてげっぷが上がってくるもの、特に質の悪い肉や油に多いのですが、そういうものは体が受け付けようとしません。
ハンバーグや練り物などのように、食材を細かくして味付けしたものは、味覚で判断できない場合もありますが、使っている食材の善し悪しは必ず食後感に出ます。すっきりとした食後感も一つの快感ですし、私はこの感覚を重要視して使っています。
比較対象となる「よりうまいもの」に接する機会が少ない中で、少しでもまともなものを食べようとした場合、ここまで述べたようないくつかの感覚を意識することで、選択の目安とすることが出来ます。店名や商品名や値段に惑わされずに、自分の感覚を頼りに、自分の感覚を磨くよう心がけて食べるものを選択していくと、自分にとってよりよい食べ物が見えてきます。
その結果、「自然の食材を使っている」と宣伝している店や商品の中にインチキなものがあったり、意外と駅の立ち食いそば屋のだしや食材がよかったりすることがありますので、自分の感覚で、判断していくことをおすすめします。

<おわり>