「輸出戻し税」を実際の計算から考えてみる

昔「頭の体操」というクイズ番組がありましたが、本日は算数問題におつきあい頂きたいと思います。輸出戻し税の関連です。

私の店は、年間売り上げが1000万に満たないので、消費税は納めていませんが、今回輸出戻し税を考えるに当たって、あらためて事業者が払う消費税について理解した経緯があるので、それも含めて解説していきます。

まずは消費税の定義をフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用します。

消費税(しょうひぜい)は、広義では物品・サービスの消費に担税力を認めて課される租税のことを指し、消費そのものを課税対象とする直接消費税と最終的な消費の前段階で課される間接消費税に分類できる。前者にはゴルフ場利用税などが該当し、後者には酒税などが該当する。

間接消費税はさらに課税対象とする物品・サービスの消費を特定のものに限定するかどうかに応じて個別消費税と一般消費税に分類することができる。

消費税
 直接消費税
 間接消費税
  個別消費税
  一般消費税
以下この記事で消費税という場合には特に断りがない限り一般消費税のことをいう。

消費税はフランスの官僚が発明した間接税の一種。財貨・サービスの取引により生ずる付加価値に着目して課税する仕組みであることから、欧米ではVAT(Value-Added Tax、付加価値税)、もしくはGST(Goods and Services Tax、物品税)また中国では増値税(ぞうちぜい)と呼ばれる。

所得の多寡に応じて累進税率を採用する直接税のように垂直的公平への配慮が乏しいとの批判もあるが、誰でもが行う消費に着目して課税を行う制度であるため、水平的公平を保つためには好ましいとの見方もある。

所得を基準にする場合は、低所得層ほど所得に占める消費税の割合が大きくなるため、不公平感が生じる。しかし、消費を基準に考えると、所得が高くても低くても同一金額の財やサービスを消費すれば同じ額の消費税を支払わなければならないため、こちらのほうが公平であると考えることも出来る。これは課税の基準を収入に置くか、支出に置くかという税金の基本原則の選択の問題でもある。

世界の消費税
1954年 フランスで最初に導入
1971年 ベルギーで導入
1973年 イギリスで導入

日本の消費税
1978年 大平内閣時に、一般消費税導入案が浮上するも、総選挙に大敗し撤回。
1986年 第3次中曽根内閣時に、売上税法構想が世論の批判を浴びる。
1988年 竹下内閣時に、消費税法が成立、12月30日公布
1989年4月1日 消費税法施行 税率3%
1994年2月頃 細川内閣で税率を7%とする国民福祉税構想が世論の批判を浴びる。→白紙撤回
1997年4月1日 橋本内閣時、税率引き上げ(3%→5%)

本日組閣が行われた第3次小泉内閣ですが、来年秋には退陣し、その後消費税の引き上げが予定されているようです。それはさておき、引き続き消費税の基本的な仕組みについて引用します。

基本的な仕組み
製造業者、卸売業者、小売業者と資産等が移転するにつれて、売上に伴って受け取る消費税額から仕入等に伴って支払う消費税額を控除することで税の累積を排除し、これらの事業者はその差額を納税することとなる。 この仕入税額控除において、日本は、ヨーロッパ諸国のようにインヴォイス(伝票)方式をとっておらず、仕入額、税額を帳簿記載し、その証拠書類を保存すれば足りることとされている。

この基本的な仕組みが最初のポイントになりますが、これを具体例で示すと次のようになります。

  • 自給屋で100円の魚を仕入れると魚屋には消費税込みで105円を支払う(消費税5円)
  • 自給屋で魚を料理して(付加価値をつけて)300円で提供する
  • 自給屋のお客さんは300円の料理を食べて消費税込みで315円支払う(消費税15円)
  • 自給屋は申告時に15円−5円=10円の消費税を納める

これが、仕入れ税額控除という仕組みです。

ここから本題に入ります。つまり、自給屋が輸出業者であった場合、消費税の流れがどうなるのかということです。これも具体的な数字を例に考えてみたいと思います。(阿修羅掲示板http://www.asyura.com/0306/dispute11/msg/358.htmlを参照)

【設定モデル】
材料納入業者A→部品納入業者B→輸出業者Cで考えた場合

  • 材料納入業者Aの販売(→部品納入業者へ)材料20万円 消費税1万円 (計21万円)
  • 部品納入業者Bの販売(→輸出業者へ) 部品40万円 消費税2万円 (計42万円)
  • 輸出業者Cの販売(→海外へ)      製品100万円 消費税0円 (計100万円)
  • 輸出業者Cへの輸出戻し税(国→輸出業者) 2万円

この輸出業者Cは、本来国内で製品を販売すれば、100万円×5%=5万円の消費税を消費者から徴収し国に納めるのですが、輸出ではそれがもらえないので消費税0円となります。ところが国からは輸出戻し税2万円がもらえることになる。これだけ考えると、輸出業者Cが得するように見えます。これが本当にけしからんことなのか。だからトヨタの会長は消費税引き上げを支持しているのか。

上記の取引を視点を変えて、国の収支で考えてみると次のようになります。

  • Aが国に支払う消費税 1万円
  • Bが国に支払う消費税 2万円−1万円(仕入れ税額控除)=1万円
  • Cが国に支払う消費税 0円
  • 国が受け取った消費税 合計2万円
  • 国がCに支払う輸出戻し税 2万円
  • 差し引き0円

つまり、国からみると、消費税の上がりはゼロであり、元々この取引、つまり輸出を行うための製造過程には、結果的に消費税はかかっていないということになります。

<つづく>