「輸出戻し税」というものからネット情報の流通経路を追跡する

私は副島隆彦氏のファンであり、彼の著作は10冊以上購入して読んでいます。また、「副島隆彦の学問道場」というHPの有料会員にもなっており、ここは頻繁にチェックもしています。
副島隆彦の学問道場 http://soejima.to/

このHPには、たくさんの掲示板があり、彼の弟子や支持者を中心に、様々な書き込みや情報の貼り付けが日々行われており、私もずいぶん参考にしています。しかし、ともすると「副島氏の関係者だから」という理由で、それらの情報を鵜呑みにしてしまう危険性もあります。最近は特にマスコミの出鱈目さがものすごいので、その反動でネット情報を重用しがちですが、それも慎重を来すことが必要であると感じた一件を紹介したいと思います。

まずは、副島隆彦の学問道場の中の「金融情報メモ」という掲示板から転載します。

[951]トヨタ奥田会長も15%を主張 消費税率が上がるほど儲かる“輸出戻し税
投稿者:ロシアチョコレート
投稿日:2005/10/26(Wed) 22:55:11
阿修羅掲示板」から貼り付けます。

(貼り付け開始)

トヨタ奥田会長も15%を主張 消費税率が上がるほど儲かる“輸出戻し税”(NikkanGendai)
http://www.asyura2.com/0510/hasan43/msg/162.html
投稿者 ああ、やっぱり 日時 2005 年 10 月 26 日 19:49:23: 5/1orr4gevN/c

トヨタ奥田会長も15%を主張 消費税率が上がるほど儲かる“輸出戻し税

▼ 輸出メーカーは軒並み恩恵 ▼

 ほとんど知られていないことだが、輸出で利益を上げている大企業は、消費税の還付によってさらに利益を膨らませている。このカラクリは「輸出戻し税」というものだが、まじめに税金を払っている中小・下請けにとっては、いかにも不公平だ。

 一般に企業が税務署に納める消費税は、商品を売った際に受け取った消費税額から、材料や部品を仕入れた際に支払った消費税額を引いた分である。

 しかし、輸出製品は別だ。商品を買ってくれた外国人から日本の消費税は取れないから、消費税は〈輸出売り上げ×0%〉でゼロ。一方、部品などの仕入れにかかった消費税は〈輸出売り上げ×5%〉となる。ゼロから売り上げの5%分の消費税を引くのだから消費税額は常にマイナスで、逆に税務署から払い戻しを受けることができる。これが「輸出戻し税」である。

 輸出額トップのトヨタはどれくらいの戻し税があるのか。同社広報部は「税制に沿って処理している。個別の数字は公表していない」というので、関東学院法科大学院教授の湖東京至氏に試算してもらった。
トヨタの年間の課税売り上げは3兆6881億円(総売上高の40%)。『課税売り上げにかかる消費税額』はこれに5%をかけた1844億円。一方、課税売り上げに対応する仕入高は3兆239億円で、これに5%をかけた1512億円が『国内仕入れにかかる消費税額』です。この差額332億円が、トヨタが本来税務署に払うべき消費税分ですが、輸出戻し税が2296億円あるから差し引き1964億円の還付を受ける。支払う消費税を上回る戻し税によって税務署には1円も納付しないですむのです」

 もちろん、戻し税はトヨタだけではない。ホンダ、日産自動車ソニーキヤノン松下電器東芝などなど輸出で好調な企業は軒並み戻し税でウハウハ。湖東氏の試算では輸出上位10社の還付金は年間7727億円。輸出企業全体では消費税収入の18%(2兆円)にもなるという。

 この輸出戻し税は消費税率がアップするほど還付金はどんどん多くなる。トヨタ奥田会長が「消費税15%」を主張するのは、まさか戻し税のためではあるまい。

 中小・下請けは税金を払い、輸出大手は払い戻し。これってどう見ても不公平である。
(NikkanGendaiDailymail Business2005.10.27.より一部抜粋)

(貼り付け終了)

これは、「ロシアチョコレート」という方が、「阿修羅掲示板」というサイトから転載をしたものであり、その情報元の「阿修羅掲示板」では、「 ああ、やっぱり」という投稿者が「NikkanGendaiDailymail Business」という、有料のメールマガジンから貼り付けを行ったというものです。つまり、この投稿自体、投稿者の意見やコメントがないまま、日刊ゲンダイメールマガジンの一部が、そのまま2回コピーされ、各所に貼り付けられていることになります。

ここで、我々がいつも口伝えで行っている情報の伝達について振り返ってみます。ある時は出鱈目な噂が、デマとしてどんどん伝わってしまうこともありますが、口伝えの場合、一旦その人が情報を咀嚼するわけですから、その情報がいい加減なものだと判断された場合は、次に伝わるときには修正されたり、そこでストップするということが起こるわけです。また、聞く側としても、「言った人」の人間性も含めて情報の信憑性が問われるわけで、信頼の置ける人といつもいい加減なことを言っている人では、その受け止め方に違いも出てくるわけです。

上記のロシアチョコレートという方は、ほとんど自分のコメントを書くことなく、頻繁に貼り付けを行っているのですが、これまで有用な情報を紹介してくれている実績と、「副島隆彦氏の関係者であろう」という予断から、今回の貼り付けの内容も「信頼出来るのではないか」と無意識的に考えてしまいます。

今回の情報が正しいとすると

  • 輸出企業は海外の売り先には消費税を課すことができない
  • ところが輸出企業には「輸出戻し税」というカラクリがある
  • これにより輸出企業は消費税が還付されさらに利益をふくらませている
  • よって輸出企業最大手のトヨタ奥田会長は消費税のアップを主張している
  • なぜならこの輸出戻し税は消費税率がアップするほど還付金はどんどん多くなるから

となり、この情報を額面通り受け取れば、「けしからんことだ」と憤慨することになります。しかし、この情報はその伝達経路で、自分の意見やコメントなしに、つまりその情報について検証がないまま、コピーして貼り付けられただけのものです。

出所(ソース)のはっきりしない情報が、ネット上でどんどんコピーされて広まり、それがあたかも真実として語られ社会が混乱したケースがありました。それは、かつてイラクで人質になった3人の男女のうち、たしか今井という青年が、「面白いことを計画しています」という書き込みを事前にしていた、という根拠のはっきりしない情報から、人質になったのは「自作自演」ではないか、と疑われた事件です。

今回の「輸出戻し税というカラクリ」が、本当に上記のようなことであれば、情報として伝えるべきだと思いますが、私も公の場で言論経験のある人間であり、情報源の確認もせずに単にコピーと貼り付けをするわけにもいきません。そこで、今回の「輸出戻し税」について、そのソースを追いかけてみました。

<つづく>