虫歯に関する一考

sakunou2005-10-18


人類の未来を考えたときに、どうしても「なぜ人間だけが・・・」という疑問にぶち当たり、その解明を求めずにはいられなくなります。たとえばその中の一つ、「どうして人間だけが風呂に入る必要があるのか」ということについて、以前に少し触れました。

下水から考える−風呂とはだかより

それは人間が毛皮を付けていない、はだかの生き物であるからと確信しています。

入浴やシャワーで体を洗う必要性は、肌の新陳代謝で不要になった垢を落とすのが主な目的でしょう。では、毛皮のある哺乳類はその必要がないのでしょうか?生物である以上、新陳代謝がないはずはありません。ではどうしているのか。

私は、猟師の体験談を聞いてピンと来ました。彼らは毛皮の中に、微生物やダニを住まわして、彼らに垢を食べてもらっているようなのです。人間は毛皮がないので、それが不可能故、体を洗う必要になったと思うのです。

昔は土に近いところで暮らしていた人間も、土から離れるにつれて清潔度が増していく結果になったのではないでしょうか。

という風に考えましたが、まだ決定的な結論には至っていません。もちろん私がその研究をするわけでもないので、今後さらに情報を集めて納得したいとは思います。なにしろ風呂と洗濯の回数の増加(つまり現代人の清潔化)は、今後水不足が予測される地球環境にとって、予断を許さない重大事であるからです。

今日お話しする「なぜ人間だけが」シリーズの一つに「虫歯」があります。今では、ペットも虫歯になるということですが、野生動物の中にはほとんど虫歯はないということです。毎日疑わずに歯を磨いている皆さんも、生物全体からすれば異常な行動をしていると映るでしょう。もし動物が人間の言葉を話すことが出来れば、「あいつらは何で毎晩棒を口の中に突っ込んで、こねくり回しているのだ」と言われるでしょう。

ではいつから人間が虫歯というものと付き合うことになったのか。ネットで歯のうんちくを検索してみるとたくさんヒットするので参考になります。いつから、ということに関しては概ね次のようなことです。

おおよそ五百万年前に人類の歴史が始まったとして、狩猟採取生活を行なっていた数百年前の間の化石人類には虫歯は発見されていません。最も古い虫歯らしきものは約二十万年前のネアンデルタール人で見つかっていますが、極めてまれです。
比較的高い頻度で虫歯が見つかるのは、人々が農耕生活を始めた約一万年前以降です。でんぷんを含む米や麦、芋などを作り、加熱加工して食べ、貯蔵するようになったことで、虫歯は増えていきました。そして万人の病気になったのは、十六世紀の砂糖の大量生産と世界流通以降のことです。
虫歯は人類の文明に特有の病気であり、その食生活の変遷と密接な関係があることがわかります。
虫歯のお話

農耕の始まりで「加熱加工」が虫歯にとって重要な要素になります。ただし、加熱という点に関しては、農耕以前も火の使用はありましたが、器(土器)がなかったのが特筆すべき点でしょう。つまり「でんぷんを含む米や麦、芋など」は、直火では調理しにくいからです。そしてもう一つ重要なのは、農耕の始まりの原点としての麦は、粉にして食べていたということです。

自然界の食物連鎖の関係は、捕食者と非捕食者、つまり食べるものと食べられるものの関係、動物→動物、動物→植物ですが(食虫植物などの例外を除く)、それは多くの場合が「いかにして食べてやろうか」と「いかに食べられないようにしようか」ということです。そのバランスが生態系を支える根元となっているのです。

ここで、マダガスカルに生息する(絶滅が危惧されている)「アイアイ」という猿と、その主食である「ラミー」という木の実の関係を紹介します。

堅い木の実である「ラミーの実」は、中にクルミのような栄養豊富な仁が入っています。アイアイはそれを主食とするために、特殊な歯とかぎ爪を進化させ、ものすごいエネルギーを使って固い殻を歯でこじ開け、かぎ爪で実をほじくるというアクロバットに成功し、それを主食にすることで生存的地位(ニッチ)を確保しました。
アイアイの写真日本アイアイファンドHPより)

このように自然界では、体をめいっぱい使って食物確保に努めるわけで、そこには必要最小限の洗練された機能が存在するのみで、虫歯など考えられないことです。仮に、ラミーの殻をこじ開けられない軟弱な歯しか持たずに生まれたアイアイがいたとすれば、生存することはできないでしょう。

<つづく>