ミュージシャンがメッセージソングで思想を歌うことの限界 <番外編>

本編の「その3」は別途書くとして、本日たまたま副島隆彦の学問道場の中の「在外日本人掲示板」で、私の主張に関連する内容の書き込みを読んだので、それを紹介します。

[1960]アメリカにロックの魂は今でもあるのか? 投稿者:マッドマン投稿日:2005/10/13(Thu) 05:01:42
日本でもストーンズのアルバムは初登場1位になったらしいが英国でも2位。普通のニュース番組でとりあげられ例の"Sweet Neo Con" についてミックがコメントしていました。ストーンズは前回のツアーでビル・クリントンをゲストに迎えたりしていたので、僕は個人的にはミックの最近の政治的信念は評価していないファンです。
(ファン暦30年やってますのでね)
英国ではおかげさまでこの曲は放送禁止にもなっていませんが米国や日本ではどうなんでしょうか。米国のバンドでネオコンについて歌えるアーティストは今何人いるんでしょうか。

2001年の9月11日以来アメリカに抗議した勇気あるアーティストを以下ふりかえってみます。

●マドンナ:「政治的な信念とは別にわたしは母親として米国に住みたくない。旦那と一緒に英国に移住する」と抗議して本当に英国に移住
してしまった。最近はよくロンドンのすし屋で見かけます。「ハリウッド」という曲こそまさにロックであり、堂々と放送禁止になりましたよね。米国を捨てて海外移住組みの筆頭。イギリスでは市民として暖かく迎えられています。

ルー・リード:ニューヨークの良心ともいえるロック詩人は40年のベテラン・ロッカー。事件当時に「アメリカが攻撃されるのは当然でないか」と大抗議。石油問題を語っていた唯一の音楽人。
ロック界の大御所であってもトップ20ヒットは「ワイルドで歩け」の
1曲しかないところが、彼が永久のアメリカのアングラアーティスト
であることを象徴しているのでは。

パティ・スミス:こちらは女版ニューヨーク詩人。最近の若いアーティストはマスコミに管理されすぎ、もっと政治に関心を持て、と最近は
語っています。最新アルバムではがんがんに政治的なメッセージソングを歌っていますね。

●ディキシー・チックス:公然とブッシュを批判した美人カントリー・グループはなんと全米のほとんどの放送局からあの時点から締め出しをくってしまった。カントリーというのは愛国派、右寄りの音楽だったのだが、本当の愛国心を持ったこの人気若手グループがアメリカと対決するとは思わなかった。最近どうしているのだろうか。クリント・イーストウッドやディキシー・チックスのようなアーティストを真の愛国主義者と言うべきなのだ。カントリー界からもっとこうしたアーティストがでてくると面白いと思うのだが。

オノ・ヨーコニューヨークタイムズに自費で一面の広告を出して
平和を訴えた活動家ヨーコは「愛と平和」のスローガンという点では60年代からずっと一貫している。そして今でも最も過激なアメリカンアーティスト。そして日本人なのである。

(後略)

投稿者のマッドマン氏は、ロンドンに留学している方です。偶然オノ・ヨーコも出てきたわけですが、この書き込みを見てわかるとおり、そして私も常々思っていたのですが、欧米では、ミュージシャンに限らず、ジャーナリストから平和運動家に至るまですべてそうですが、その主張と行動は筋金入りであるということです。それに比べると、日本人の表現と行動は、全く甘いの一言に尽きると思います。

私は特に日本人であることに、(最近は)劣等感をもっていませんが、この手の分野については遅れているとは言わないまでも、かなわないなという思いがあります。争いを好まない民族であるが故かもしれませんが、こと音楽での主張、つまり「ロック」ということにおいては、日本人はその音楽のスタイルだけ取り入れて、魂はついて行っていないのではないか、というか本当に「ロック」というのがわかっていないのではないかと感じます。

スタイルだけ取り入れたということは、日本のロックが政治的・思想的主張の弱さに表れており、それは日本人全般に言える、政治的無関心が根底にあると思います。イギリスのパブ文化に代表されるような、議論する文化が弱いのでしょう。

このような、本来「反骨」であるべきロック(つまりメッセージソング)が、日本の中では主張性が極めて弱いことに疑問を感じつつあった私は、「自分の作詞活動に当たってはラブソングは絶対書かない」という掟の下に、

  • 松下幸之助の水道理論
  • 抑圧されたリビドの彼方
  • 進化論
  • プラスチック・ユンタ
  • 日本一になりたい
  • ロシアのとる道

というような詩を書き続けました。しかし、前に述べたように、貧弱な情報源と勉強不足故に、それは浅はかなメッセージにしかなっていなかったということです。