ミュージシャンがメッセージソングで思想を歌うことの限界 その2

sakunou2005-10-12


釈迦の哲学を歌にしたこと自体、すばらしいことだと思います。しかし、その先にミュージシャンとして何があるのか、ということが疑問になってきます。そこまでわかったのなら次は何をするのか、ということを私は求めてしまうのです。

ここで、他のミュージシャンの例をとって、歌と思想についてをさらに考えていきます。

初期の頃の佐野元春も、私にとって心酔したミュージシャンの一人です。特に3枚目のアルバム「SOMEDAY」は完成度の高い作品でした。ヒットしたタイトルナンバーは不朽の名作でしょうが、このアルバムの中に「ロックンロール・ナイト」という名曲があります。演奏時間も長く、構成も複雑で、相当のエネルギーをもって作った曲だということは、自分で曲を作ったことのある経験からも理解出来ます。この曲のサビの部分で、彼は次のように歌っています。

(前略)
たったひとつの夢が
今 この街の影に横たわる
でも今夜は思いっきりルーズに みじめに
汚れた世界の窓の外で
全てのギヴ&テイクのゲームに
さよならするのさ

Rock & Roll Night Rock & Roll Night
今夜こそ
Rock & Roll Night たどりつきたい

(中略)

ずっとさきから街路樹に車を止めて
そして 静まりかえった闇の中に息をひそめてると
世界中で たったひとりだけ取り残された気がして
楽しかった思い出が 心を通り過ぎてゆく
街では清らかに唄う無邪気でSexyな天使達
ネオンの下で きっと夜が明けるまで
悪ふざけしてるのさ
フッと気づけば みんなこの街にのみこまれたプリテンダー
どんな答えをみつけるのか
どんな答えが待ってるのか

Rock & Roll Night Rock & Roll Night
今夜こそ
Rock & Roll Night たどりつきたい
Rock & Roll Night Rock & Roll Night
今夜こそ
Rock & Roll Night たどりつきたい

この歌は、彼と彼女そして友達などをモチーフとして、街の風景を歌っているのですが、そこには、若さ故の憤りと真実を求めたい気持ちが根幹を貫いている、と私には感じられました。だから、この曲を聴いている時分、私には彼女はいなかったし、「Rock & Roll Night」というのがどんな「夜」なのかわからなかったけど、とにかく「今夜こそ たどりつきたい」というフレーズに対しては、「そうだ!そうなんだ!」と涙を流しながら聞いていた記憶があります。

では、それからどうなったのかというと、これを言うと、今でも佐野元春のファンである人に怒られるのですが、若くしてこれだけの完成度の高いアルバム(作品)を作ってしまった故、その後の作品はその壁を越えるためにもがいていると、私にはそのようにしか感じられなくなってしまいました。その後も彼の作品はしばらく聞き続けていましたが、「スウィート16」というアルバムで、オノ・ヨーコと競演し、ジョン・レノンばりのボーカルで歌う曲を聴いたとき、「Rock & Roll Night」で「たどりつきたい」ことは、結局そこに行き着いてしまうのか、と感じ、それ以降彼の歌は聴くことはなくなりました。

(さらにつづく・・・のか?)