読者からのFAX

わしズム読者からのFAXとそれに対する私の返事を転載します。

新藤洋一様
わしズムvol.11を拝見し、FAXしました。H17年に農業と料理を体験できる塾を立ち上げ予定と書いてありました。今、開塾しているのでしょうか?もししていたら、詳しい内容をお教え願います。ぜひそちらで勉強させて頂きたいと思っております。
***子


***子様

新藤洋一

 わしズム誌の拙文をお読み頂きありがとうございます。お問い合わせの件につきまして、お答え致します。
 まず結論から申し上げますと、現在、予定していたような「塾」は開いておりません。2月に子供が生まれたという家庭の事情や、塾の内容と運営に対する準備が整わなかったことが主な理由です。さらに申し上げますと、「塾」というものは一つの手段であって、それは私が構想している「ある目的」に向かっていくための入り口の一つであり、状況によってはその手段は必ずしも塾という形をとらないで、別の方法に急遽変更することもあり得ます。どういう方法が一番いいだろうか、ということは常に課題として考えているところです。
 ところで、今回せっかく私の文章に興味を持って頂き、FAXも頂いたので、さらにその目的についても、少し説明したいと思います。
 大きな結論としては、この先この国をどうしていくのかということです。現在郵政やら小さな政府とかで、選挙が行われています。財政の破綻や教育やニートの問題で、若い人たちが目標を見失っている中で、100年先を見据えた我々の生き方はどうあるべきなのかということを、私が脱サラしてからの体験を元に得た一つの道筋を提唱し、理解してもらうための活動が根本にあります。
 私がわしズムに投稿した6回の文章は、その前提として、日本の農と食の現状を知ってもらうためのものでした。さらにその先にあるのが私の主張の核心の部分になります。その文章を今書こうとしているところです。それを要約すると次のようなことになります。

1.主食は家族自給で
 農地をサラリーマンに開放し、現金収入の仕事は別に持ちながら、国民皆農を目指す。米は手植え手刈りで作るのを基本とする。稲の生態学見地から、手植えの根拠(必要性)はわしズムで述べたが、さらに日本人の精神的宗教的意味合いもそこに含まれていることは今後述べていく予定。実現の方法論は今後多くの人に議論してもらいたいが、100年後に目指すとしても、今その一歩を踏み出さなければ何も変わらない。小さな一歩を踏み出すためのトリガーを作ることを目標とする。
 近い将来の目標としては、大きな工場などを持つ企業およびその地元の自治体と提携し、経済特区として希望する社員を募り、農地を与えて、半農半サラの生活実験を行う。良好な結果が得られれば、順次特区を全国展開していく。
 また、上記特区とは別に、現在空いている農地を個別に交渉し借り受け、すぐにでも半農半サラでやれる人も順次増やしていく。
*実際群馬県内で、新藤の提唱するやり方で主食を家族自給している人は既に数人いる。

2.18才のすべての男女に2年間の徴農制
 「主食の家族自給」の訓練期間として、若者に農役を課し、日本の伝統的な生活や食文化を学ばせる。農畜産加工の実践をはじめ、衣食住に関わる仕事(大工・建築・料理・和洋裁・・・等)を経験させる。
 また農役の期間には、座学も行う。現在の義務教育では体系的に教えていない自然科学(たとえば宇宙の成り立ち、地球・生命の進化、人類の進化)/漢方や陰陽五行説の考え方、太陰暦太陽暦/世界の主な宗教と日本の神道/土と作物/エネルギー/環境・・・等。 徴農制の具体的進め方としては、実験地を作るのは現在のところ難しいので、当面は研修内容(特に座学に関する部分)を体系化していくことと、賛同者に農業体験を行う機会を作っていくことである。

 上記以外にも、日本の農と食の現状を変えていくためのアイディアは色々あるのですが、まだまだ賛同者が少ないのが現状です。これらのことを農と食の現場から訴えて、賛同者を増やしていくための一つの手段として、体験塾のようなものをやろうと考えたわけです。本来ならば、私の考えに同調する若者を、ここに集めて面倒見ることができればいいのですが、私の力不足、財力不足から、実現に至らないのが現状です。本当に徴農制の実験地のような学校を作って、あなたのような若い人を教えて、育てたいと思っています。
 それでも昨年には、私の思想や技術を学びたいという若者が遠方から来て、受け入れ態勢のない中で、自分で夜のアルバイトをしながらアパート代を払って、一年半の間勉強していきました。しかし、恥ずかしながら、幼い子ども3人を抱えて、儲からない商売をしている身で、理想と現実のギャップにうちひしがれながら(悲惨な生活をしているわけではありませんが)生活をしているのが現状です。
 現在の活動としては、塾は実現できなかったわけですが、いずれ何らかの形で、若い人に伝える場を作りたいという思いから、地元のフリースクール不定期の講師を行っています。また、その補完として、かつ私が提唱する徴農制のカリキュラムの私案として、「学問の部屋」というブログを開設し、投稿を続けています。

 **さんからわしズムを読んでのご質問を頂いたことに対して、必要以上のことを長々と書いてしまいましたがお許し下さい。
 私がわしズムに投稿したのは、その読者のレベルが高いであろうと判断したからです。ご質問ご依頼に対して、満足できる返答ができませんでしたが、これをきっかけに、私の今後の活動にご理解ご協力頂ければ幸いです。