これからの日本人には議論する能力が必要である

日本人が主義主張や議論が苦手であることを初めて自覚したのは、20代の前半にタイに行ったときでした。アジア人同士大して感覚は違わないと思っていましたし、必要な会話は英語のできる友人に任せて、一歩後ろでニコニコしていれば、特に問題なく過ごせるだろうと考えていたのが間違いでした。
何もしゃべらない私を不審に思ったタイ人は、「おまえはどうして話さないのだ」「おまえはどういう風に考えているのだ」「おまえの宗教は何なのだ」と聞いてきました。予期せぬ質問を浴びせられた衝撃こそが、まさにカルチャーショックであり、ここで初めて、「日本人のコミュニケーションの感覚というのは、世界には全く通用しない」ことを悟ったのです。

タイではほかにもこんな経験がありました。
銀行で両替をしようと、整理券を持って並んでいたとき、自分の番が来たので両替をしようとすると、イタリア人の男が割り込んできて、いちゃもんをつけてきました。男は列に並んでいなかったのですが、整理券の番号は私より若かったことで文句を付けに来たようです。しかし、私は並んでいたのだという英語が出てこなく、もごもご反論していたら、そばにいた日本人が「He was on the line」と言ってくれ、男は引っ込んでいきました。なるほどこういう場合にはこう言えばいいのか、と学習していくわけです。

今度は、バスでパタヤに向かっているときでした。指定席のチケットを買って、一人で座っていたのですが、柄の悪そうな外人が数人で乗り込んできて、私の隣の席に座った男が
「そこは俺の友達の席なんだ」といちゃもんをつけてきたので、私はすかさず
「もちろん、俺はあんたの友達じゃないか」と言って握手すると、その後は何も起こりませんでした。
その後インドに行った際には更に鍛えられましたが、その話は別の機会にいたします。
私は上記のような海外での体験から、日本人の感覚やコミュニケーションの方法というものを客観的に理解し、ある程度使い分けられるようになりました。
しかし、私自身も、また日本人全体としても、まだまだ議論や主張という点では、世界基準がわかってないと思います。若い人には公教育として必要なことだと思います。

さて、ここに紹介するブログhttp://blog.livedoor.jp/mumur/で、電話で突撃取材というのがあります。この方の議論の仕方は参考になるので、紹介します。
好例として「ピースボートの野平晋作氏と電話で激論しました」http://blog.livedoor.jp/mumur/archives/19704003.htmlから引用します。

mu ○○です。
野 ピースボートの野平と申します
mu わざわざありがとうございます。デモに関する記事についてなんですが
野 ハイ
mu 「人を殴っておいて、その殴られた人が怒ったとき、もっと冷静になろうよと殴った側が言うのはおかしいと思いませんか?」との一文があります。これは、暴力を容認されるということでしょうか。
野 そういうことではございません。暴力を容認することはできません。但し、その原因についても考えるべきではないか、ということです。
mu そうですか。ここで、http://www.jlp.net/news/021015c.htmlの記事を読みますと、「在日朝鮮人への嫌がらせを許すな」と主張されています。これは、ダブルスタンダードじゃないんですか。
野 違いますね
mu 何故ですか
野 違うと思いますよ
mu だから、何故ですか。この場合だったら、朝鮮総連に対し「嫌がらせが起きた原因を考えてみるべき」というべきだと思いますが。
野 それは違います。今回の中国のデモというのは、あまりにも日本の報道が「中国が悪い」という点に偏っているので、彼らのデモの原因についても探ってみるべきだと主張しているのです。
mu 原因が何であれ、暴力行為は許されないでしょ。
野 私たちもそう思いますよ。
mu ならば、それを主張するべきです。
野 いや、ですから今回はマスメディアの報道が偏っているから、私たちは声を上げたわけです。
mu まとめると、「日本人が加害者の時は日本人が悪い。日本人が被害者のときも日本人が悪い」ということですね。
野 違います。
mu そういうことでしょ。
野 いいえ、違います。
mu 違わないですよ。ダブルスタンダードですよ。「何が何でも日本人が悪い」という点では一貫してますけど。
野 ダブルスタンダートとは思わないですね。
mu それならば、「在日朝鮮人への嫌がらせ」に対して、ピースボートは「朝鮮総連は原因をよく考えろ」と言うべきです。
野 そう思わないですね
mu そう思わないのはピースボートだけです。ネット上では、今、大騒ぎですよ。
(中略)
mu ・・・(本当に分かってないみたいなので、丁寧に説明することにする)今回の反日デモによる暴動で、ピースボートは「そもそも日本は暴動の原因を考えてみるべき」と主張してるわけですよね。
  一方で、拉致問題を契機として、在日朝鮮人に対してチマチョゴリの切り裂きなどの「嫌がらせ」が起きた場合は、彼らと一緒になって日本を非難してますよね。
  仮に、論理一貫性を考慮した場合、ピースボート朝鮮総連に対して、「そもそも原因に拉致問題があるのだから、あなた方朝鮮総連はその点を考えなければならない」と主張するべきなんですよ。
野 ・・・・・・・・・・・(やっと、意味が分かった模様。このあたりからトーンダウンしてくる)
mu 若しくは、朝鮮人に対する「嫌がらせ」に機軸を置くなら、今回の反日デモに対して「原因は何であれ、暴力は絶対に許されない」と主張するべきなんです
野 ・・・・・・・
mu 日本人が「加害者」のときは「嫌がらせはよくない」と主張して、日本人が被害者のときは「その原因を考えてみるべき」というのは、完全なダブルスタンダードなんです
野 ・・・・そうは思いません
mu 何でですか
野 ・・・・・違いますね
mu だから、何でですか
野 ・・・・・違うと思いますよ
mu その理由を聞いてるのです。あなたは、今トーンダウンしてますけど、ダブルスタンダードの意味が分かったからですよね。沈黙が多いのは、ご自分の言動の矛盾を自覚したからですよね。
(後略)

若い方は、これからの人生で、議論の大切さをぜひ意識して下さい。
私も更に鍛えていきたいと思います。