私が3年前に農水省に行った政策提案の内容

今日、私が世話をして私の家の近くに新規就農をした若き農業者であるH君が田んぼの作業を手伝ってくれました。作業が終わって耕耘機を洗っているとき、彼から次のような質問がありました。

最近新聞で見たのですが、政府は代替エネルギーとして「バイオエタノール」の導入を進めるということです。ガソリンに10%混ぜて使用するということです。バイオエタノールの原料であるサトウキビなどの作物が、アマゾンなどの森林を伐採して植えられるということが起こるようですが、それが果たして本当に二酸化炭素の削減といえるのでしょうか。それを進める役人は、本当にそれが二酸化炭素の削減、つまり地球温暖化の歯止めになるのであると理解して進めようとしているのか疑問なのですが、新藤さんはどう思いますか。

このことについて、最近の政策決定と報道の内容は確認していないので、詳しいコメントはできませんでしたが、私が考える根本的な「これからの食糧とエネルギーのありかた」を彼に伝えるとともに、こういうことについて自身で取り組んできた実績などを説明しました。その中で、3年前に、私が農水省に対して行った政策提言のことも話しましたが、本日ここにそのときの議事録を掲載したいと思います。

環境のことを真剣に考えるのは本当に大変なことです。節約や生活の縛りを個人やグループで実践したとしても、苦労の割にたいした広がりがなく、挫折する人もたくさんいます。過去の失敗をふまえ、今までになかったアプローチを、私はおそらく来年から本格的にやっていくと思います。すでに準備は整っています。

そのことはさておき、以下が3年前の私の政策提言です。

バイオマスの利活用に関する政策提案会の概要

農 林 水 産 省

1.日 時:平成15年1月22日(水) 13:30〜15:50

2.場 所:農林水産省第二特別会議室(本館4階南側、ドア番号:本467)
       住所:東京都千代田区霞が関1丁目2番1号

3.提案会の概要
(澤山指導官)
○ ただ今から「バイオマスの利活用に関する政策提案会」を開催いたします。皆様本日はお忙しいところご参集いただきありがとうございます。本日の進行を担当させていただきます、大臣官房地方課の澤山でございます。よろしくお願いいたします。では、開会に当たりまして、大臣官房地方課長の横山がごあいさつをいたします。

(横山地方課長)
○ 地方課長の横山と申します。一言ご挨拶申し上げます。
 本日は皆様方、お忙しいところを本政策提案会にご出席いただき、誠にありがとうございます。ぜひ皆様方から積極的なご発言・ご提言をいただき、有意義な提案会になることを期待しております。
 農林水産業農山漁村は、言うまでもございませんが、人の命を支える食料の供給という使命を担い、また、農地・森林・海を通じた資源の循環、環境との共生を実現する重要な役割を果たしております。私ども農林水産省としましては、このような「いのち・循環・共生」の基本的な枠組みづくりを国の責務として受け止め、当面する様々な課題に取組んでいるところです。
 このような農林水産施策の推進に当たりましては、特に最近、幅広く国民各層の皆様方から、農林水産行政に対する提言・提案やご意見をお聞きしながら、施策への反映に力を入れているところです。様々な取組みを行っておりますが、例えば、大臣出席の下で、農林水産省タウンミーティングを開催しております。第1回は、昨年3月に岡山で行っており、既に5回開催されました。これから埼玉、熊本で6回目、7回目を開催する予定です。
 また、農林水産省におきましては、地方提案推進室を一昨年の5月に開設しました。本省のほか、全国7箇所の地方農政局北海道開発局沖縄総合事務局にも設置しております。地方提案推進室におきましては、農林水産行政に対する様々な提案・ご意見をお聞きし、意見交換を行っています。
 本日行うこの提案会は、いわばテーマ別の提案会ということで、重要な政策課題について、テーマを定めて本省で開催するというものです。昨年6月から既に4回行っております。これまでのテーマは「新規就農」、「地域の研究開発」、「食育」、「野菜・果実の消費拡大」でした。そして今回5回目として「バイオマスの利活用」というテーマで、皆様方から様々なご意見をお聞きしたいと思います。
 この「バイオマス」につきましては、皆様方ご承知のとおり、昨年12月27日に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定され、政府全体で重要課題として取組んでいる事項です。
 本日の提案会におきましては、各地域でバイオマスの利活用に取り組まれている方々にご出席いただいておりますので、それぞれの地方から生の声をぜひ聞かせていただきたいと思っております。


(澤山指導官)
○ 本日は山形県から熊本県まで、9名の方々にご出席いただいております。本日ご出席
いただきました皆様を簡単に紹介させていただきます。

<提案者>
  狩山 恭三(岡山県(財)船穂町農業公社事務局長)
  清藤 幹夫(岐阜県岐阜市農林部畜産課長)
  小林  修(長野県宮田村水道課長)
  新藤 洋一(群馬県 作農料理人の店 自給屋 店主)
  栃原 栄一(熊本県鹿本町企画課審議員)
  野村 正次(滋賀県愛東町税務住民課課長補佐(生活環境担当))
  藤本 佳司(福井県美浜・三方環境衛生組合美方環境衛生センター所長)
  前田 典秀(神奈川県 NPOクリーンエネルギー・フォーラム専務理事)
  渡辺 和能(山形県立川町農林課長)
                              (五十音順、敬称略)

 続いて農林水産省の出席者をご紹介します。
農林水産省
  農村振興局農村整備課関岡課長
      〃     集落排水・地域資源循環室村松室長
      〃           〃     田中課長補佐
  大臣官房企画評価課バイオマス・ニッポン総合戦略プロジェクトチーム土屋課長補佐
  総合食料局品質課龍口課長補佐
    〃  食品産業企画課森田課長補佐
  生産局農産振興課朝倉課長補佐
     〃    吉岡課長補佐
     〃    坂本係長
   〃 畜産部飼料課浅沼課長補佐
  農林水産技術会議事務局研究開発課藁田課長補佐
  林野庁木材課谷係長
   〃 経営課猿谷課長補佐

(中略)

(澤山指導官)
○ ありがとうございました。それでは群馬県の新藤様お願いします。

群馬県・新藤氏)
○ 私は極めて個人的なリサイクル、つまり家族で食料を自給していこうということで、
その際に必要なバイオガスプラントについて提案したいと思います。
 私自身、料理人をやりながら、家族の米、麦、大豆、野菜を自給しており、それが小さな機械だけで十分賄えると確信を得ました。これはサラリーマンの方でも土曜日、日曜日に十分できることなので、半農・半サラという生き方を提案するとともに、それを実践したい人ができる環境づくりを提案していきたいのです。
 まず、その前提条件ですが、所有する必要がある農機具としては、軽トラック、手押し耕運機、刈り払い機だけです。また水田は手植え・手刈りですが、草刈りの労力については、自分と家族とでやってみたところ、皆で協力すればそれほど大変ではないという実感を得ました。
 それからポイントは、安全な有機肥料を家族自給するということです。そのためにバイオガスプラントが有効になります。私のバイオガスプラントは仲間4人と、煉瓦を積んで造ったものです。これには1ヶ月くらいかかり、場所も必要であり、ある程度土地と労力がないとできないので、これは特別なものと考えていただければよいと思います。このシステムにおいて、当方で投入するのは料理屋と家族の生ゴミ、飼っている鶏100羽分の鶏糞です。これを毎日投入することで、1日1立方のメタンガスが排出します。これが4人家族が1日で使うガスの量になっています。そこで出る液肥は、だいたい田畑あわせて5反くらいの生産物を賄える量です。材料費は20万円くらいでした。労賃はボランティアということで無しです。このタイプのプラントは、今日本で20基くらい稼働しているということで、皆、有機農業を実践している農業者の方々が導入しています。
 先ほどから水分調整の難しさの話がでていますが、このバイオガスプラントの利点は、嫌気発酵になるので、水と固形物とが1:1で投入できます。このため、生ゴミはそのまま、鶏糞の場合は水と混ぜて入れます。これを家庭で導入する場合は、家庭用生ゴミと家族の糞尿を入れます。すると当然エネルギーとしてガスが出ますので、これはエネルギー自給の一助として使用します。液肥を田畑に使い家族の食料を自給して、また生ゴミと糞尿を返していくというサイクルができるということです。4人家族では田畑合わせて1反程度あれば、主食の自給はかなりできると実感しています。
 そのための要求事項ですが、このバイオガスプラントを1軒1軒が造るわけにはいきませんので、家庭向けの普遍的なバイオガスプラントの研究開発が必要だと思います。また、出てくるガスの中に硫黄成分が若干残っており、これが金属腐敗などをもたらしますので、脱硫装置の研究開発を進めていただきたいのです。これは燃料電池でもかなり問題になっており、バイオマス燃料電池を動かす場合のネックになっています。そして、そのバイオガスを利用できる機器がなければ使えないので、マイクロコジェネ、ガス灯、ガス冷蔵庫、ガスストーブ等の開発・普及を期待します。今、私どもではコンロに使って煮炊きをしているだけです。
 それらの実現に向けて、私が取り組んできたライフスタイルは、当方作成の「自給屋ホームページ」に掲載しています。また、自給勢力の結集、政治的アプローチということで、今年の始めに「日本自給党」というホームページを立ち上げ、こういったことについて取り組みたいという全国の声を集めて、政治的にもアプローチしています。
 また、町づくりの案として、天ぷら廃油をガソリンにするBDFをJAに導入させていくことも提案させていただきます。


農水省政策提言会で私が発言しているところ