2011年地デジ移行で不自然なニュース動画を見なくてはならない

昨年の暮れに地デジパソコンを買い、我が家のテレビ環境は地上デジタル放送になりました。年末から年始にかけて、NHKスペシャルなどの番組があり、早速予約録画してあとで見たり、DVDにムーブしてPCで再生したり、高画質の映像が楽しめるようになりました。

これまでアナログの電波の状態がよくなかったことなどから、テレビはもっぱら子供が図書館で借りてきたビデオの再生モニターになっていましたが、見違えるような画質とクリアな音声になったので、これまでよりも多少はニュース番組などの放送を見る機会が増えました。

新しいテレビ環境では、VHSのビデオデッキは接続していないので、子供たちは現在放送されている子供向け番組を、リアルタイムや予約したものしか見ることができなくなりました。最初はそれで満足していましたが、やはりこれまでのように自分の見たいものを借りてきて見る、という習慣が身に付いているので、どうしてもそちらの要求が多くなります。そして、最近では子供向けのソフトがDVDで貸し出されるようになってきたので、結局テレビパソコンも子供が占領する機会が増えてきてしまいました。

ところで、これまで気づかなかったのですが、今日の昼にニュースを見ていたところ、女性アナウンサーの口の動きと音声が微妙にずれているように感じました。その女性が魅力的だったからなのか口が大きかったからなのかは別として、これまでは気づかなかったのになぜか今日に限ってそれが気になりました。

気になり出すと放ってはおけないので、その原因について色々想像を巡らせながら、別の放送局のニュースを見てみるとやはり同じようにずれているように感じました。しかし、例えば特派員のレポートなどの録画されたビデオ映像を放映している時はずれていないようですが、スタジオの生のアナウンサーに戻るとどうもずれているのです。

で、こういう時はテレビパソコンというもが役に立つのですが、早速テレビ画面を小さくして、インターネットで「地デジ 遅延」というようなキーワードで検索をかけて見ました。検索の結果出てきたのは意外な事実でした。

地デジの遅延で問題となっていたのは、「送信と受信がリアルタイムではない」ということです。この検索で出てきたブログなどで論じられていたのは、ほとんどが「正午の時報が正確に届かない」という事実でした。これまでのアナログ放送だと、例えばNHKの正午のニュースが始まる直前には、テレビ画面にアナログ時計が映し出され、例の「ピッ、ピッ、ピー」という信号音と共に正午が知らされるようになっていました。

ところが、地デジ放送では受信が数秒遅れるので、テレビで正午を知らせた時点ですでに正午から数秒遅れているという事態に陥っているということです。ですから、今ではNHK総合テレビでは、正午のニュースの前には時計の画像は表示されなくなっています。

多くのブログで取り上げている「時報問題」は、私にとっては特に不満には思われません。いくつかのブログで文句を言っているのは、「新年を迎える時報がずれることで、リアルタイムで新年を祝えないのは不満である」ということですが、私はそんなことはどうでもよいくだらないことだと感じます。

それでこの遅延の生じる原因ですが、簡単に言えば、地デジ放送というものはこれまでより多くの情報(データ)を電波に乗せる必要があるためデータを圧縮(エンコード)しており、それを受信側で解読(デコード)するための時間が必要なので、遅延が生じるというものです。

このように地デジ放送で遅延が生じるということはその性質上しょうがないことのようですが、音声と映像のずれが生じるのもそれが原因なのでしょうか。

このことについて「社団法人地上デジタル推進協会」http://www.dpa.or.jp/に電話をして聞いてみたところ、先ほど説明した理由により「そのような仕様になっている」とのことでした。細かい技術的な説明は求めませんでしたので、どういうケースでどのようなずれになるのかということは分かりませんが、地上デジタル放送とはそういうものであるということは確認されたわけです。

さて、2011年にはアナログ放送が終了し、すべての国民が地デジ放送を受信しなければテレビは見ることができなくなります。今の時点で地デジを見ている人はまだ少ないと思います。政府では、低所得者層に「地デジチューナーを無料配布する」というような議論があるとも聞きます。

私も最初に地デジ放送を見た時には、それまでのアナログ電波の状態が悪かったこともあり、その美しい画像とクリアな音声に感動したものでした。今でもテレビを見ていてそう思います。しかし、この音声と映像のずれというのは、一旦意識してしまうとかなり気になります。とても不自然なのです。何がどう不自然なのか。

以前勤めていた会社で、映像の仕事をしていたので分かるのですが、自然現象として映像(視覚)よりも音声(聴覚)が遅れるということは存在しています。それは光の速さと音の速さの違いがあるからです。それは雷や空を飛ぶ飛行機など、日常で体験していることであり、自然の摂理だからです。しかし、音声よりも映像が遅れるという現象は自然の中では起こりえません。それ故そういう現象に人が出会った時とても不自然に感じるのです。

だからといって、ニュースなどの事実がねじ曲がって伝わるとかの不都合が生じるわけではありませんが、それに気づいてしまった私は、明日からニュース番組を見るたびにそれを意識して常に違和感を感じるという不快感を背負ってしまいました。こんな事は気づかなければよかったのかもしれませんが、アナログ放送が終了して、全国民がこの状況を目にした時、このことに気づいた人がそれを黙ってはいないでしょう。いずれ誰もが知ることになるのかもしれません。

そのときに、ほとんどの人はそれ以降も大して気にせずに地デジを見続けることができるのか。また、そのころには技術が進んでこのような問題が解決されているのか。今の時点では何とも言えませんが、私にとっては音声と映像のずれは、「リアルタイムで新年が祝えない」ということよりも大きなデメリットとして感じているのです。